努力と体力、そして思いやり

Interview: Tomoya Kumagai
Pic: Takahiko Kumagai


会社紹介を兼ねた内部インタビューをお送りします。初回は弊社デザイナーの渡部伸を改めてご紹介。彼は熊谷と高校時の同窓生でして、つきあいは15年にも及びます。当然毎日顔を合わせているわけで、今更聞くこともあまりないのですが、せっかくの機会ですので、普段はあまり聞かないようなことを聞いてみました。渡部は大学卒業後、某大企業にてデザインの修行を積んでいたのですが、とりあえず原点からやりなおしたいということで慶應大学に学士として入学、平面デザインを学びつつ、満を持して1999年にスローガン社の立ち上げに参加しました(インタビュー:熊谷朋哉 / 2005年)。

◎長いつきあいになりましたが、とりあえず渡部くんの一番言いたいことは。

「仕事キッチリ笑顔ニッコリでしょうかね」

◎それは会社自体のスローガンなんで。

「じゃ、もひとつ」

◎はい。

「弊社を何卒宜しくお願い致します」

◎ストレートですね。本題に入りましょう。渡部くんは弊社の製作デザイナーであるわけですが、デザインに対する考え方などをどうぞ皆さんにアピールして下さい。

「そうですね、あのね、デザインは細かい仕事でもあるんだけどね、ものすごく筋道を立てて骨の部分をしっかり考えるようにはしてるつもりです」

◎ということは。

「とにかく、単に表面的に綺麗なものつくるのは簡単なの。とんがったデザインもまだ簡単なの。人が本当に愛着を持ってくれるデザインをつくるというのが難しいですね、ほんと」

◎なるほど。

「恋愛と一緒よ」

◎そうですか。昔からデザイナーになりたかったんでしょうか?

「いや、野球選手。それを諦めてからボクシングを始めました」

◎ほう。

「ボクシングは熱中しましたよ。毎日10kmのロードワーク、スクワットに縄跳び、腹筋に腕立て、あのころ身体を鍛えておいて良かったですね」

◎デザインとボクシングに関係はある?

「それはまあ、結局は体力勝負というところですかね。あとは美しいものが勝つということとか」

◎それはいいセリフだね。

「今私がこの集中力を持てているのはボクシングのおかげですよ。大学時代あれこれ勉強したことよりもボクシングのほうが役に立ってるよ」

◎勉強しました?

「親が苦労して学資を出してくれたのを無駄にはできないよ。最初は自分でも新聞配達のアルバイトしてたもん。大変なんだよ、朝2時半に起きて7時まで、で、その時間に配り終わらないと日曜日に罰当番なんだよ。疲れて勉強なんてとんでもない話でさ。で、親に甘えることにしたの」

◎ダメじゃないの。

「うちの両親はすんごい苦労した人たちなの。勉強したくても出来なくてさ。だからそのあと親に頼ってからは、ほんとに一生懸命勉強しましたね」

◎卒業して一旦就職して、また大学に戻ったわけですが。

「ちょっと大きな企業に入ったんですけれど、もう、業務の全体が本当に巨大でね。もうちょいと自分自身の力で勝負したいなというとこがあって。それなら一から勉強かと。まあ、あの会社には2年いたわけですが、本当に良い経験にはなったと思いますけれどもね。で、社長に会社立ち上げを誘われたの」

◎異様にしっかりした学生/新社会人像を思い浮かべてしまうんですが。

「会社、オレいないとダメじゃん。違う?」

◎スケジュール担当だしね。

「早め早めが鉄則です」

◎そのとおりですね。

「だってボクシングは3分で決まるんだよ。持ち時間は最初から決まってるの。となると、前に前にと向かっていかないとダメでしょう。人生のんきに構えてる暇はないんですよ。苦しいときほど前に進まないと解決しないんだよ」

◎なるほど。

「今さ、努力という言葉ってそんなにかっこいいイメージないじゃないですか。でもね、オレは言いたいの。みんなに言いたいの。才能だとかそういうことじゃないのよ。最後は、努力と体力、そして思いやりよ。それがない男とは結婚しちゃダメ。オレはダラダラしてる奴嫌いなのよ。あと嫌いなのは、約束守らない奴とかさ、挨拶しない奴とかさ。いい大人のくせにさ。毎日腹が立つことばっかりだよ。結局悪いのはさ、ならぬことはならぬと言ってこなかった親なのよ(熊谷註:会津藩校日新館に伝わる教えの一つ)。自分の子供くらいちゃんとしつけろと私は言いたいね」

◎じゃ、渡部くんのご両親の教育は厳しかったんですか?

「厳しくはなかったけどね、我慢することだけは教えられたね。姉がヤンキーだったし」

◎はあ。

「うちの姉は強かったんだよ。もう絶対服従よ。毎日が我慢だったね」

◎はあ。

「もうね、ほんとにね、大変だったね」

◎話題を変えます。そうですね、会社として、そしてひとりのデザイナーとして、今後どういうことをやっていきたいですか?

「難しい質問ですね。(長考)・・・正直なところ、とりあえず目の前にある仕事を着実にこなしながらより質を高めていきたいというところですかね。大きな目標を敢えて立てるとかじゃなくね」


渡部伸……1973年生まれ。デザイナー。主にweb、紙媒体のデザインを行う。

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