限りなく明晰に、限りなく繊細に

Interview: Hidetoshi Yokosawa


連続内部インタビュー、最後はいよいよ弊社代表取締役、熊谷朋哉です。「社長」として全ての業務を統括する一方で、評論やインタビュー等も数多く発表。愛と情熱、真剣さとユーモアとをめいっぱいに詰め込んで放たれる彼の文章は、各方面から高い評価を得ています。わたくし横沢は2年前からの参加ということもあり、まずは会社を設立した当初の話から聞いてみました。メディアの大海を平泳ぎするスローガン丸の船長、その生き様をどうぞ。(インタビュー:横沢秀俊 / 2005年)。

◎それでは、まずSLOGAN設立の経緯からお願いします。

「原型は学生時のパンクバンドなんです。でもただ音楽をやってるだけじゃあまり意味がないだろうと、レーベルというか、色んなことが出来るプロダクションにしようと思ったの。1997年かな。個性豊かなメンバーたちだったし、経済的に自立していくためにもそうするしかないだろうと。当時の私はプロデューサー見習いだったんですけれど。で、独立というか、このメンバーでいこうと法人登録したのが、少し時間が経って1999年です。今振り返るとちょうど大きな時代の変わり目だったと思いますね」

◎音楽をやってるだけじゃ、というのは?

「より具体的に言うと、純粋に音楽というメディアだけで今後どれだけのことが出来るかは疑問だったんです。2005年の今ほどじゃないけれど、音楽の位置づけが本当に変わってきていた時だったから。メディアは音楽の他にも広告、文筆、ネットワーク、電波、それこそ色々あるわけで、コアになるものさえしっかりしていればなにをやっても面白いことになるんじゃないかと。
結局、音楽や美術そのものに対する、色んな意味での熱愛と憎悪の両方があって、それがモダン・アートの自己批評性と重なって仕事のコアになっているかとは思っているんですが、まあ、まだまだ全く決着はついていないですね」

◎社長は以前から文筆の仕事もしてますが。

「ひょんなことから書かせて頂くことになって、それから色々と機会を頂いて。音楽関係に限らず、とにかくインタビューは楽しいですね。とにかく初対面で世界最高クラスの連中にハードコアな話を真正面からぶつけられるわけだし。中高生の頃からのヒーロー達にも大体会えている気がしてますし、幸運ですよね。ルー・リード、アート・リンゼイ、ピーター・サヴィル、テレヴィジョン、パティ・スミス、ヨゼフ・コスース……本当に殆ど会ってるな。日本のアーティストにも沢山会えているしね。まだ会えていないのはイーノ、U2、レナード・コーエンくらいかな。まあ、いつか会える機会は来るでしょう」

◎一番印象に残っているのは?

「全般的に驚いたのは、大体が本当にいい人たちだということですね。実りて頭を垂れる稲穂かなというのは本当だなと思いましたね。その中でももっといくらでも話したいと思ったのはアート・リンゼイとピーター・サヴィルかな。知的で情熱的で、素晴らしい男たちでした。ルー・リードもすごく面白かったね」

◎大学や専門学校で講義をしたりしています。

「講義だなんておこがましいところもあるんですけれども。見ている人の反応をダイレクトに知ることができるという点では面白いです」

◎社の方に話を戻しますが、業務の紹介をお願いします。

「こういう機会にしっかりと会社をわかりやすく説明しないといけませんね。弊社は主に広告全般と書籍編集の企画制作をしておりまして、特に私と古川は文筆の仕事もしてます。渡部くんがヴィジュアルを見て、横沢くんはそれぞれの分野に噛んでますね。
とはいえ、コアなメンバーはわずかに4人ですから、どんな仕事でも全員が力を合わせないといけません。それでも仕事をこなす中でそれぞれ得意分野が見えてきて、メディアごとにそれぞれの役割を変えながら仕事にあたるパターンが定着してきています。もちろん最終責任は私なんですけれども。まあ、この点は未だに一つのバンドみたいなものです。これからは各人がメディアごとに特化したディレクター・クラスになってくれればと思っています」

◎基本的なアティテュードなどがあれば。

「アティテュードなんて大袈裟なものはないんですが、とにかく〈こんなもんでいいや〉というのだけは嫌だね。仕事には締め切りがあるから仕方ないんだけど、それでもやっぱり、毎回新しい次元に自分たちを持っていかないと未来がなくなります。その意地みたいなものを理解してくれる人とこそ、しっかりした関係は続くわけだし」

◎なるほど。実際の仕事に関してのモットーはありますか?

「楽しく仕事をするということかな。とにかく仲良く、笑顔でね。少なくともこれくらいの小さな集団においては、お互いを信用することに勝る経営・運営法はないと思うんですよ。あとはまあ、実際の制作に関しては、コミュニケーションに於けるある種のコアのようなものを様々なメディアでどのように貫徹できるか、それにこだわっています」

◎社内外で色んなプロジェクトを始めてますが……

「まあ半分お遊びですけれどもね。うちの会社ならではの、笑えるということと仲の良さと多様性とがあって良いんじゃないかと思ってます。他にもやりたいことはたくさんあるので。ひとつひとつ実現していきたいですね」

◎今後の展望などを。

「音楽から教育まで幅広くやらせて頂いているんですが、色々な機会を頂くことに関しては毎回感謝してます。それ以外の言葉はないですね。クライアントさんや友人たち、本当に多くの方々に助けられてます。だから、皆さんの期待にはいつも150%で返そうと思っています。で、これが200%に上げられればなと。
今後に関しては、先にも言いましたが、個々のメンバーの技量が上がることが本当に一番ですね。それぞれが本当に一流になったときに、ようやく集団としての真価というとちょっと大袈裟ですが、会社を作った時のコンセプトが実現することになるんじゃないかと。その時にひとつの集団として徹底的に美しく過激に仕事が出来たらね、もう私は満足だと思います。個人としての生活はまだまだ続くわけなんだけれど。あとはひとつひとつの仕事がどう作用していくか、自分たちにどう返ってくるかですよね」

◎それでは、社長のスローガンをバシッと。

「私のスローガンとしては……、大声では言えないようなことを大切にしたいということかな、社名に反して(笑)。反面、言いたいことは限りなく明晰に伝えられるようにする必要があるということも意識してるので、こっちだと社名と矛盾しない(笑)。その両方だよね。難しいね。限りなく明晰に、限りなく繊細に、というところかな。格好良すぎて恥ずかしいな。本当は『笑顔ニコニコ』だけでいいんだけれど」


熊谷朋哉……1974年生まれ。編集者、音楽評論家、プロデューサー。編書多数。

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